安藤 大変な苦労があって、そしてお客様との信頼を築いて、今の南薩食鳥株式会社ができあがったのですね。現在の取り組みについてお教えください。

徳満 現在の基幹事業のうち、「種鶏」が6割を占めております。南九州一帯では「味なとり」というブランドで、スーパーや百貨店に卸したり、鹿児島中央駅地下に専門店を設けるなど、九州一帯では広く認知されていると思っております。ただ、九州だけに限られてしまっているのが現状です。東京や名古屋、大阪への販路を広げ、この美味しさと九州の鶏の文化を一緒に広めていくことが、私の使命だと思っております。

 また、台湾・韓国・香港などアジアを中心に輸出入にも力を入れております。海外からの研修生の受け入れや、英語・韓国語の話せる社員の雇用まで、グローバルな時代に合わせた展開も視野に入れております。
 現在、鹿児島県に2箇所、宮崎県に1箇所工場をもっており、生産ラインの効率化を図っています。ただ、最終的には人の目を注ぎ、脂ののりがいいものだけを市場に回すようにしています。衛生面、品質管理も徹底し、公的検査員、食品衛生管理者も配し、ISO9001も取得しました。また、鶏を安心させる集荷フォームや、公害問題など、全てにおいて気を配っております。

安藤 美味しいことはもちろん、安全・安心な食文化を次世代につなげていくためにはとても大切ですね。今後はどんな挑戦をされていきますか。

徳満 リーマンショックや、鳥インフルエンザ・口蹄疫の問題も発生し、食肉業界は打撃を受けています。また、少子高齢化が進む社会の中で、消費量が落ちているのが現状なのです。ただ、業界の当たり前を当たり前とせず可能な限り挑戦していくという姿勢を取り続けていきます。その一つが、2011年から新たに着手した「ハラール事業」なのです。

安藤 ハラールというのは、戒律の厳しいイスラム教徒向けの食事ですよね。なぜそこに挑戦することにしたのでしょうか。

徳満 日本人は、鶏肉の部位の中で、モモ肉を好んで食べる傾向があります。対して、アメリカ人はムネ肉を好むのです。そうだ、アメリカに持っていこう、と。ただ、アメリカは輸出入の審査がとても厳しい。だったら、中近東はどうだろう?と思ったのがきっかけです。当時、輸出入も始めており、海外へ行く機会が増えたことも関係あります。様々な世界状況も見ながら、「ハラール」への取り組みを決めたのです。

 ただ、そこからが大変でした。そもそもイスラム教徒にとっては、ハラールの食品のみを口にすることは神の教えに忠実に従うこと、すなわち信仰そのものなのです。

 イスラム教徒の屠殺人がいること、鶏肉となる鶏が何を食べているか、1年に1度の検査・指導など、衛生基準も含め、とても厳しい審査がありました。無事、2011年、ハラール認証が下り、2012年には専門の工場も新設し、新たな事業として始動していきます。

安藤 その発想力がすごいですね。総務課長からはじまった種鶏が、世界に羽ばたいていきました。現状に留まらず、常に挑戦し続ける徳満社長。今後の展望をお聞かせください。

徳満 「種鶏を処理する」という業界は認知度は低いけど必要な業界であると思っております。業界の地位向上、業界を残していくためには、他社をライバル視するのではなく、お互いがネットワークを組んで、業界全体を盛り上げていくことが必要だと考えております。 

 また、日本全国へ九州の鶏文化と共に、「種鶏」の歯応えとコクが特徴のこの美味しさを伝えていく。認知度のアップや流通網の拡大など、使命感を持って取り組んでいきたいと思っております。もちろん、海外への市場の拡大も含め、企業としても成長していきたいと思っております。

 将来的には、BOPビジネスにも参入したいと考えております。日本ではまだ取り組みをしている会社が少ない中、世界中で約40億人いると言われている低所得層にも購入可能な商品、手の届きやすい価格で、余すところなく種鶏の価値を届けていく、そんな仕事に挑戦していきたいと思っております。鶏で世界を結び、世界に貢献していきたい。私は、その請負人になりますよ。

徳満義弘
南薩食鳥株式会社 代表取締役


 1980年、会社再建の為に出向という形で、南薩食鳥株式会社の経営に参加。ライバル会社が成し得なかった、「種鶏の安定供給、冷蔵での提供」を実現し、業界のパイオニア的存在に。グループ初の若手取締役に就任、社長代行を経て、1995年、代表取締役に就任。「幸福創造企業」を経営理念とし、若手の育成から海外へ向けた輸出入やハラール事業など常に新しいことに挑戦し続けている。


南薩食鳥株式会社 
〒897-0302 鹿児島県南九州市知覧郡3635
TEL: 0993-83-2086 FAX: 0993-83-2804
南薩食鳥株式会社オフィシャルサイト URL http://www.nansatu.co.jp