安藤 意外にも身近に突破口があったんですね!

鬼丸 2009年7月に大手結婚情報誌に広告掲載を決め、それに向けて動き出しました。立ち上げた屋号は「鬼丸工房」。製作はスタッフに任せ、私はそれをホームページにアップする。成功に繋がるかは分からない。でもやるしかありませんでした。

 7月20日、広告掲載と同時に「鬼丸工房」が始動。しかし、待てども注文は来ず、やはりダメだったかと不安は募るばかりでした。結婚式場のプランナーさんにも商品を見てもらいましたが、その場では評判は良くても、なかなか話は進みませんでした。

 8月に入ったある日、初の注文がウェブから舞い込んで来ました。それは喜びというよりも驚き。「本当に来た!」とにわかには信じられず、「本当にいいのだろうか」という気持ちにもなりました。弊社にとっては初の「B to C」のビジネス。自分たちの付けた値段でモノが売れた瞬間でした。

 その後、徐々に問い合わせ・注文が増え、鬼丸工房の名が広がっていくのを感じられました。その中で、どうやったら商品に付加価値をつけられるだろうと、素人なりにやれる限りのことはやろうと決意。おめでたい席に使われるものだから、筆は熱田神宮で祈祷してもらい、商品発送の際には、手書きのメッセージカードを同封。外箱には運送屋向けに手書きの注意書きを貼ることにしました。

 ありがたいことに、購入された半数以上の方からお礼の電話やメールをいただけます。また、実際の商品を見てから、ご両親へのサンクスボードなど、違う商品を注文してくれる方も多いんです。ウェルカムボードを買っていただいた新婦さんのお姉さんが、ご自身の結婚式でも注文していただけたり、プレゼントとして受け取った方が、お子さんのご誕生の命名書を注文していただけたり。人と人が繋がっていく様子も見られるんですよ。

安藤 事業開始から1年、今では大手ウェディング施設との繋がりもでき、事業が軌道に乗ってきた感がありますね。秘訣は何だったんでしょう?

鬼丸 もともと工場の人間なので、出会う人や情報は限られていました。このままじゃいけないと思い、2005年頃から、積極的に異業種交流会に参加するようになりました。結局売るのも買うのも「人」ですから、人との出会いは大切だなとつくづく思いますね。この時出会った人が、今の事業で繋がっている、ということもあるんですよ。

 大切な出会いといえば安藤さんもその一人(笑)。地元の中小企業を巻き込んでカッコいいプロジェクトをやっている人がいると知って、注目していたんです。ある日、安藤さんのブログを拝見したら、「今日東浦でやるイベントに参加します」と書いてあって。すぐさま「今から行きます!」とコメントを書き込み、その日の予定を蹴って、現場に直行。ご挨拶をさせていただき、「どんな振る舞いをされるのか」と、一挙手一投足を2メートルの距離で伺っていました(苦笑)。この日、安藤さんには多くの方を紹介していただき、実際に仕事にも繋がった出会いもありました。

安藤 そんな報告を聞いて、この人は自分で道を切り開いて、チャンスを掴みに行っている人だなと思って、ラジオ出演のお誘いもさせていただきました。順調な時は、自然と人と人が繋がっていくから不思議ですね。ブログを見て実際に会いに行く行動力、謙虚さ、絶やさない笑顔。鬼丸さんのその人柄が、今回の事業でも核になっていると感じます。それでは今後の展開をお聞かせ下さい。

鬼丸 ウェディングのみに留まらず、誕生や入学・卒業、結婚記念日や還暦など、様々な人生の節目で素敵なメッセージをプレゼントするお手伝いをさせていただきたいです。つまり、私は人の「想い」を伝える代弁者。ご依頼された方が、相手のことをこんなに想っているんだよ、ということをしっかりと伝えながら、「モノよりもコト」でサプライズを提供できれば素敵ですね。

 今後は全国のアーティストの皆さんとの繋がりをもって、お客さんとアーティストの架け橋になれたら、と考えています。その具体的な展開として考えているのが、ギャラリーの設立。我々にはアルミ、ステンレス、アクリル、プラスチック、木材などを加工し、額縁などをオーダーメイドで作る、ものづくりの技術がありますから、アーティストにとっては、芸術活動に役立つ商品が揃う・発注できると同時に、ギャラリーが作品展示・販売、お客さんとの知り合いの場になれば。また、お客さんにとっては、理想の商品をカタチにするアーティストとの知り合いの場になればと思っているんです。考えるだけでワクワクしてきますね

 辛い時期もありましたが、前向きに努力を続けていくことで、道が開けるのではと実感しています。今後も時代の波の中で臨機応変に頑張っていきます!

鬼丸正之
株式会社鬼丸 代表取締役


創業以来、2度訪れた不況の危機に新規事業を立ち上げることで、乗り越えてきた。ものづくりの技術を活かした、記念日を演出するオリジナルアイテムで顧客にサプライズを提供。アーティストと顧客の橋渡しとなるべく、営業活動に奔走。2010年3月中小企業庁が行う「経営革新計画」の県知事承認を取得。

株式会社鬼丸
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